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巻 頭 言


行ってみなくちゃわからない

 行ってみなくちゃ分からない―持論である。例え降水確率100%の予報であろうと、現地までは行ってみる。

  いつだったか台風が接近しているという予報であったにもかかわらず、白馬岳をめざしてわが家を出た。前日、実施するのか中止するのかという問い合わせのTELが数本入った。「行くだけは行ってみます」というのがぼくの返事だった。「電車が止まっちゃったら行けませんけどね」とつけくわえて、あとは笑ってごまかした。

 新宿発7時の特急あずさは定刻通り発車、やがて青空の下の白馬駅に到着した。予定していたメンバーはだれ一人欠けることな く改札口前に集合。「台風が来ているのに出かけるのか」、全員がそんな声を背中に聞いて家を出てきたという。

 この日は白馬大池泊、翌日は白馬岳を越えて鑓温泉泊、2泊3日の山旅を堪能した。行ってみなくちゃ分からない、のである。

 昨日、1月22日、寄居の町の北側に位置する鐘撞堂山に登った。前日、東京や横浜、水戸なども大雪であった。念のために軽アイゼン携行と案内しておいたから、装備的には心配しなかったが、秩父の山でラッセルさせられそうだという想像がたのしくもあり、うっとうしくもあった。

 寒い朝、羽毛服を着込んでわが家を出る。家の前のアスファルト道路が凍っている。池袋から乗った東上線の車窓もまっ白。きれいだ。雪はいいなあと思いながら、朝日に輝く雪景色を眺めていた。

 そうこうするうちに原稿の〆切が頭をよぎった。手帳を取り出し、思い浮かぶ言葉の断片をメモり始めた。どれくらいたっただろう。東松山はもう過ぎていたかもしれない。目を上げて外をみると、雪が消えている。こちらでは雪が降らなかったようなのだ。メンバー全員がびっくりしていた。 行ってみなくちゃ分からない、とはまさにこのことではないか。

 空気は冷たかったが、風がなくて陽だまりに居ればあたたかい。鐘撞堂山の頂上で たのしくもおいしいナベを囲むひとときを 過ごせた。

 お天気ばかりではない。行ってみなくちゃ分からないのは、情報の少ない山の魅力である。昨年はおかげ様で、魅力的な山々の発見が相次いだ。こちらも自信がなかったので無理にお誘いできなかったが、こんないい山だと分かっていたら、もっと強引にお誘いすればよかったという山がいくつもあった。

 下北半島の恐山・大尽山。この山の頂に立って湖畔に恐山寺が建つ宇曽利山湖を見下ろしたときは、この聖地をみつけ出した先人の偉大さをしみじみと思った。1000年も昔、どうしてこの地が発見されたのか。

 とにもかくにも、「山っていいな」と思う。行ってみれば分かることだけど、どんな山もみんないい山だと思う。今年もたくさんの山に登ろう。