本文へジャンプ
巻 頭 言


雨が降っても楽しい

 北半球の中緯度に位置するわが国の天気は、だいたいのところ3分の1が晴れ、3分の1が曇り、3分の1が雨であるそうだ。1年のうち200日くらい山に入っている岩崎の場合、天気の具合はそんなところに収まっている。晴れの場合が若干多いかな、とも思っている。

 そんな岩崎をつかまえて、「雨男」だと決め付ける方がいる。反対に「晴れ男ね」とニコニコする方もいらっしゃる。ぼくの登山教室に参加すると必ず雨に降られるという方、反対に必ず晴れるという方、だれが晴れ女、だれが雨女なのだろうか。

 NHK教育テレビで放送された「中高年のための登山学」を見て下さった方が、いつも雨ですねと気の毒に思ってか、テルテル坊主を100体送って下さった。100という数は、百名山にちなんでのことと思う。お気遣いにはすっごくうれしく、今もって部屋の一隅に飾ってあるが、若干、反論しておきたい。

 前述したように、天気の割合は各3分の1だ。曇りは3分の1なのだが、雲っていれば眺望はないしで、画面は暗くなる。風でも吹いていれば、雨でなくてもウィンドブレーカー代わりに雨具を着込んだりするから、見ている人には雨降りのように映るようだ。それで番組はいつも雨、ということになるらしい。お天気のいい時だって何回もあったのに・・・・・・。

 例えば、北海道の幌尻岳。お山は晴天であった。前々日かに雨が降って、アプローチの車から眺める川の流れは茶色で、先が危ぶまれたが、林道を歩き終えてここから額平川に入るという所では、水は澄み、川面は陽光を反射させてキラキラと輝き、充実した山旅となった。しかし、水量は多く太ももまであるので、お互いしっかり手をつないで、流れに負けないようにして、渡渉をくり返した。それも楽しい思い出だ。

 今夏、再び額平川から幌尻岳をめざした。行きがけの駄賃に登ったアポイ岳では雨に降られたが、幌尻岳は晴れ、額平川の水量はヒザ下で各自好きなようにルンルンと渡渉をくり返した。

 南アの荒川三山から赤石岳をめざしたときは、荒川岳は曇天で風が強かったが、赤石岳は晴れていた。山の天気ばかりはお金じゃ買えない。せっかくの山行で雨に降られたと嘆いてばかりいても始まらない。晴れてくれた方が百倍楽しいのは間違いないが、雨が降っても楽しく山に登りたい。

 つい最近、山でお会いしたご夫婦が、ぼくの番組をよく見て下さっていたそうだ。「岩崎さんの『山が降っても楽しい』を教訓にしています」と言っていた。年に何回かしか山に行けないので、雨に降られるとガッカリしてしまうのだが、ガッカリしてしまっては山が楽しくなくなるので、「雨が降っても楽しい」を思い出して、楽しく山に登ることを心がけているそうだ。うれしい話を聞かせて頂いた。楽しく登っていれば、トラブルも少ないはずだし・・・・・・。


                        (平成19年10月20日 山の遠足連絡帳 第178号 掲載)