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巻 頭 言


「日本百名山」のこと

 
 12月18日付朝日新聞朝刊に『週刊日本百名山』が創刊されるという広告が載っていた。1冊2山、50冊で100山を紹介するという。

 
深田久弥さんの『日本百名山』は、中高年登山者のバイブルとして、山好きなら知らない人はいない名著である。深田さんが山の品格、歴史、個性に加えて、およそ1500m以上という条件を考えて選び出した百山の紀行集であり、エッセイ集であり、山岳誌であって、ガイドブックではない。

 ご長男の森太郎さんから聞いた話である。氏が知人とお酒を飲んでいると、隣にいた人が彼らの話を聞いていて、氏が深田さんのご子息であることが分ると、「『日本百名山』は名著ですね」と話しかけてこられ、「しかし、あれはガイドブックとしては役に立ちませんね」と言われたそうで、森太郎さんとしては返事のしようがなかったと。前述したように、『日本百名山』は、中高年登山者が憧れる日本百名山のガイドブック

ではない。

 日本百名山の概念を知り、日本百名山を登るためのガイドブックとしては冒頭紹介した『週刊日本百名山』が利用価値大といえる。大版の朝日ビジュアルシリーズなので写真がきれいだし、迫力がある。眺めているだけでも楽しい。毎号付録として綴じ込み「携帯登山マップ」があるので登山の実際に役立つし、岩崎元郎の「HO TO 安心登山」ほか、充実の連載コラムが目白押しなので、読み物としても買って損はない。

 しかし、なによりもまず『日本百名山』を読んで頂きたいと思う。大好きな山に戦前から登っていらっしゃった深田久弥さんは、百山の紀行・エッセイを一冊にまとめて『日本百名山』として、新潮社から昭和39年に上梓されたのである。

 
『週刊日本百名山』の創刊日は1月17日、1号には富士山と丹沢が載っている。

 
さて、日本百名山、中高年登山者が聖地巡礼のように、日本百名山を追いかける風潮に眉をひそめる登山家が少なくない。オリジナリティーある登山をせよとか、百という数字にこだわるのはナンセンスという意見も出ている。

 しかし、個性、歴史、品格に高さも条件として選ばれた百の名山、自分のセンスで選んでみれば、特別に意識しなければ、かなりの部分で重なり合ってくるのではないか。オリジナリティーがないと否定することもあるまい。

 
「百」にしても、3、7、8、10、13、33、34、88、108、洋の東西にかかわらず、数字にこだわることもよくある話だ。ぼく的に言わせてもらえば、アンチ百名山派のアンチなご意見も、オリジナリティーあるものとは思えない。

 たかが山登りである。されど山登りである。百名山を追いかけても追いかけなくても、好きに登ればいい。ひとつ注文をつけさせてもらえるなら、楽しく登って頂きたい、それだけである。



                        (平成19年12月20日 山の遠足連絡帳 第180号 掲載)