|
1983年11月、サンシャインシティー文化センターで開講された「中高年のための山歩き入門講座」を担当したのが、中高年登山と関わりを持つことの始まりでした。「山の遠足」という言葉を使うようになるのは、少し後になってからです。
開講当初は好きな方は登っていましたが、ブームと言われるほどの人数ではなかったと思います。2、3年経過した86年頃だったかと思います。あれ、山に行く人が多いな、ウィークデーなのに、と感じたことを今でも覚えています。
1956年、槇有恒隊長に率いられた第3次マナスル登山隊は、8156mの頂に立つことに成功、わが国は空前の登山ブームとなったのです。このとき30歳だった男性は、仕事が忙しくて山に登ってはいられなくなり、20歳だった女性は結婚、出産、育児で山どころではなくなったのです。
30年後の86年、彼はめでたく定年退職、彼女は無事育児を卒業、中断を余儀なくされていた山に戻ってきました。これが中高年登山ブームの始まり、とぼくは考えています。
83年11月の実技教室をどこにしようかと考えたぼくは、ウィークデーコースは秩父・丸山、ウィークエンドコースは秩父・観音山に登ってみることにしました。
中高年を対象にした登山教室は数が少なかったので、企画は大成功、折からの健康志向との相乗効果で、机上講座は30人~40人が受講して下さり、実技教室には15人~20人は参加して下さるという状況でした。この活気がみなみらんぼうさんとご一緒した「中高年のための登山学」を生み出したのではないかと思います。
しかし、2000年に入るとバブル崩壊で中高年登山ブームは減速したように思われます。それにも関わらず、大手旅行会社の登山ツアーへの参入、リストラされた山好きのガイド業開始などで、この業界も過当競争の時代に入ったように思えます。
わが遠足倶楽部にしても、この数年、机上講座にせよ実技教室にせよ、参加者を減らしてきています。さて、どうすると思いながら、思いを引きずっていたら2008年になってしまいました。さて、どうすると再三、再四考えて、そうか、原点に帰ることだな、という当たり前のことに辿り着きました。
「中高年と女性のための山の遠足」は、登山教室であって、登山ツアーではありません。その山へご参加頂いたら、登山、山登り、山歩きのハウツウ、ノウハウを学んで頂きたいのです。そのあたりのアッピールが弱かったかなあという反省があります。
不破哲三さんのご著書『私の南アルプス』からいつも引用させて頂いている大好きな言葉があります。「なぜ山に登るの」「山は自分の発見」、そんな山登りができるようにハウツウ、ノウハウを学べる場として、「山の遠足」を継続していきたいと思っています。
ちょっとオーバーな表現かもしれませんが、いまや世界は一個人が把握しきれないほどに多様化していると思います。世界が多様化するのは必然ですが、個人が多様化してはいけません。ていうか、よほどの天才でない限り多様化できっこないので、自分の道を選ばなくてはいけないという難しさが、現代社会には在ると思います。
山登りも同じこと。大昔はスキーですら山の世界に入っていたものが、リフトができることでスキーは山と別の世界のものとなり、現在では岩登りからスポーツクライミングが別の世界のものとなりつつあり、トレールランも新しい世界ができているようです。そんな多様化された登山状況の中で、原点に帰るというのはどういうことなのか。難しく考えるのではなく、単純に簡単に考えたいと思っています。
「中高年と女性のための山の遠足」は、登山教室です。これから山に登ってみたいという初心者には、どんな山にどんな風に登ってもらったらいいか。初心者でも若い人はどうする、体力のある人はどうする、60代半ばになって、これから始めてみたいという人はどうする、という問題に答えを出していけたらいいなと思っています。
山の大小、難易はともかく、毎月1回2年間山登りを継続してきた人がいます。Aさんは2年間24回の山が全て旅行会社の登山ツアーへの参加でした。Bさんは毎回ガイドブックから登れそうな山を見つけ出して仲間を誘い、自分がリーダーとして山に登ってきました。
AさんとBさんとでは登山力の違いは歴然としてあるでしょう。良し悪しを論じるつもりはありません。その人の登山力をどのようにしたらチェックできるかなあと考えています。登山力をチェックした上で、次のステップをアドバイスできたらいいのになあ、ということを考えています。
まずはスタンダードな山を登ったらいいよと思うのですが、スタンダードな山ってどんな山?と次なる疑問が湧いてきます。これもジャンル別というか、レベル別というか、それぞれスタンダードがあると思います。
これから山に登ろうという初心者レベルのスタンダードなら、高尾山、ユガテ~日和田山、石老山、草戸山、青梅丘陵、鐘撞堂山などアプローチが便利、行動が3~4時間、登高差が500m前後の山ということになってくるでしょう。こんな山を10山登ったら次のステップとして、高水三山、陣馬山、御前山、川苔山、大山、丹沢表尾根など、行動が5~6時間、登高差が1000m以上ある山がお勧め、同じ初心者でも体力ある人だったら、このレベルの山から始めても問題ありません。
と、まあそんなことを考えたりしているのですが、こんな風に書き並べるだけでは説得力がありません。山を学び、ステップアップしていくカリキュラムとして具体化しなくちゃいけないよなと思っている段階です。カリキュラム作成への最大の壁が多様化です。体力のない初心者向き、初心者だけど体力のある人、山を始めて2~3年、ステップアップをめざす人、ステップアップはめざさない、そのレベルで世界を広げていきたい人向き、なんてのを作ることができたら、日本に元気を取り戻す一億二千万人総登山者化計画も夢ではあるまい、なんて考えている今日この頃です。
(平成20年2月20日 山の遠足連絡帳 第182号 掲載)
|