本文へジャンプ
ゼミ・レポート


強風の八ヶ岳・ 硫黄岳〜天狗岳                              記: 大津洋介

朝、東京を出た時はどんより曇って今にも降り出しそうな天候でしたが、前日の低気圧が東に遠ざかった昼の美濃戸口では、時々日が差すまでに天気が回復しました。無風快晴のまるで春のような陽気の中、汗を流しながら3時間弱の行程をこなして、人でごった返す赤岳鉱泉に入りました。


 翌日は、天気予報どおり冬型の気圧配置となり、ガスで周囲の山々はまったく見えない状況。この中、順調に森林限界手前まで登り、風に対する準備をする。この時はほとんど無風状態、参加メンバーも本当に風なんてあるのかなと疑問をもったことでしょう。急斜面を登り、赤岩の頭に出たとたん、強烈な風、風、風。硫黄岳の頂上も風とガスの中、頂上からの大パノラマも夢の中でした。だだっ広い硫黄岳の頂上を、ルートファインディングを慎重に下った夏沢峠は樹林帯の中、無風状態の中しばし休息する。

 さあ、ここからが今回の核心部、樹林帯を抜けた根石山荘の鞍部からは、また風の中を天狗岳めざして登りにかかる。朝よりはいくらかガスは薄くなり、めざす東天狗、西天狗が地吹雪のなかぼんやりと確認できるようになった。相変わらずの強風でバランスを崩しながらも富士山での訓練を思い出し、アイゼンを効かしてひたすら登る。岩と雪のミックス、ちょっとしたやせ尾根を越え、東天狗岳の頂上へ。握手もそこそこに黒百合平への下山にかかる。不思議なもので夏沢峠と同様に、中山峠手前の樹林帯に入るとまったくの無風状態となる。

 黒百合ヒュッテでは、ストーブを囲み、苦しかった一日を振り返って話が弾む。薄暗くなる頃には、東の空にはオリオンが輝き、全員、早々に眠りについた。

下山はパノラマコース経由、辰野館へ。天気は快晴、青空と雪化粧した真っ白いシラビソとのコントラストがすばらしい。パノラマコースにはトレースはなく、雪は膝ぐらいまでの深さ、ラッセル訓練にはちょうど良い。初めてラッセル体験をするメンバーもいて、全員交代でラッセルをしながら、落とし穴ありの下山となる。辰野館では、定番の温泉にビール、3日間の疲れをいやし、家路についた。

 暖冬といわれている今年の冬ですが、核心部を縦走する日には、ちょうど西高東低の冬型の気圧配置となり、冬山らしくなりました。ちなみに11日の朝9時の高層気象図をみますと、輪島上空約1,500mで風速13m、気温−8℃、3,000mで風速20m、気温−19℃とたいへん強い風と低温が観測されていました。雪上訓練を行った富士山では無風の暖かい中でのトレーニングであったため、参加メンバーはたいへんに苦しい講習となったことでしょう。しかし、冬山の風と寒さを十分に体験できたと思います。

 実際の冬山では、今回の風以上の強風が吹き荒れるのが当たり前です。風に飛ばされないための確実な耐風姿勢や不安定な体勢での確実なアイゼンワークなど技術の重要さや、風と寒さに対しての装備の重要性が分かっていただけたと思います。展望は得られませんでしたが、冬山経験を積むことでは価値あるメニューだったといえるでしょう。特にモンブランを目指さなくても、ちょっと興味がある方、次の機会にぜひご参加ください。さあ、次は3月の赤岳です。



                     
 (平成19年2月20日 山の遠足連絡帳 第170号 掲載)